遺された人を想う生前整理のやり方

遺された人を想う生前整理のやり方

遺された人を想う生前整理のやり方

近年は「終活」という言葉も定着し、自らの最期に備えた準備を進める方が増えています。かつては“死”を意識した行動や話を持ち出すことは、それだけで縁起でもないと忌み嫌われ、避けられる傾向にありましたが、医療技術の進展や社会、ライフスタイル、価値観の変化などを受け、よりフラットに、むしろ前向きに受け止められるようになりました。

そもそもこの世に生を受けたものに、いつの日か死が訪れるのは、当たり前のことですから、遺される家族の負担を少しでも軽減したい、自分自身も納得のいく終末期が迎えられるようにしたいと考え、心身の健康に余裕のあるうちからできる準備を始めておくことは、十分に有意義で、広くプラスに働くことといえるでしょう。死はいつ訪れるか分かりません。先に何が待っているか分からないからこそ、人生は難しく、またこの上なく素晴らしいものでもあるのです。

終活の中でも、とくに重要かつ主要なものには生前整理が挙げられます。今回はこの生前整理について、どのようなものでどう進めればよいのか、コツや実践の意義、注意したいポイントなど、知っておきたい事柄を分かりやすくご紹介します。自分にはまだまだ早い、エンディングなんて実感もないし、先のことと思われている方も、ぜひこの記事に出会った今を機にできることを考えてみましょう。

生前整理とは?遺品整理とどう違う?

部屋の不用品を片付ける女性生前整理とは、文字通り自身が生きている間に身の回りの整理を行っておくことです。不用品の処分に始まり、財産をどうするか、葬儀や墓についてはどう考えているかなどを明らかにしておくことまで、幅広い内容を含みます。

生前整理の認知拡大・普及に努め、サポートを行うプロフェッショナルなど、人材育成も進める一般社団法人生前整理普及協会は、生前整理を“生”の観点から、今の人生をより輝かせるために行う「生き活」と解し、自分らしく生ききれるよう物・心・情報の整理を行うことが生前整理であると定義しています。これまでの人生の片付けであるとともに、残りの時間もより豊かにする、生を充実させるのが生前整理なのです。

整理といえば、遺品整理という言葉もあります。生前整理は本人が、主に家族や親族など遺された人のことを想い、後に困ることがないよう自ら身辺の整理を行っておくことです。
それに対し、遺品整理は亡くなった後に遺族が故人の財産や持ち物を整理することで、誰がどのタイミングで行うかに大きな違いがあります。

遺品整理は経験されたことのある方なら、とくに強く実感いただけるかと思われますが、葬儀の直後から迫られる大変な作業で、精神的にも肉体的にも想像以上に負担が大きいものです。

近しい間柄の肉親であるとはいえ、どこにどのような貴重品が保管されているか、資産価値のあるものかそうでないのかなど、分からないことも多く、なかなかスムーズに進められるものではありません。故人の想いが詰まったもの、思い出のものなど、残された膨大なものを目の前にしてどうしていいか分からない、何から手をつければいいのかさえ分からないと途方に暮れてしまうこともしばしばです。

とくに相続でトラブルに発展しそうな状況があったり、賃貸物件などで早期に片付けを済ませなければならなかったりする場合は、期日的にも余裕がなく、やむを得ず多くの物をまとめて処分しなければならなくなります。遺品整理を担う専門業者も増えており、一括処分を依頼することは可能ですが、要不要の最終判断は遺族が行わねばなりませんし、費用もかかります。さらに、やはり後々になってこれで良かったのかと後悔するケースも少なくありません。

生前整理は基本的に本人が1人で行いますが、家族やアドバイザーなど専門家の手を借りながら進めることも可能です。コツコツと積み重ねておくことで、自身の意志を示してのちに反映させること、遺される人たちの負担を軽減し、相続にかかる無用な争いを避けることができるようになるのです。

生前整理を自分で行う意義

まだまだ元気で余裕のあるうちに生前整理を始めておくことは、大いに意義とメリットのあることです。ここでは主要な点をまとめてみていきましょう。

まず、財産問題や親族間での相続トラブルを未然に防止することができます。普段ばらばらに保管し、生活の中に組み込まれていると、どこにどう資産があるのか、自分自身でも見えにくくなっていることは多いものです。生前整理を行えば、そうしたばらばらに存在する“モノ”を整理し、把握して財産一覧を作ることも可能になります。

そこから残る資産をどう分け、どう活かしてほしいのか、遺言やエンディングノートで意志を明らかにしておけば、亡くなった後の処理に反映させられ、相続争いになるような事態を避けることができるでしょう。

先述のように、大変な遺品整理の負担を軽くできることも大きなポイントです。いざというときに備え、整理が進められていれば、残る家族の精神的・肉体的負担はかなりの程度まで軽減され、突然の事態に途方に暮れるといったことをなくせます。本来、高い価値のあるもの、資産となるものが紛れて処分されてしまうような事態も避けられ、きちんと活かされるべきかたちで次の世代に手渡せるようになります。

悪質な遺品整理の業者に法外な費用を要求されたり、相続に必要な需要書類が散逸して手続きが行えなくなったりすることもなくなります。余計な手間や費用、負担を減らし、スムーズで誰にとっても後悔のない未来を作っていく、生前整理ではそのための準備ができるのです。

家族のためばかりではありません。生前整理は自らの歩んできた道を振り返り、あらためて自身と向き合うことで、これから自分はどうしたいのか、残りの人生をどう生きたいと考えるのか、よりクリアに見定めることができるようになります。それによってより悔いのない一生を送ること、充実した生を生ききることが可能になるのです。

これは“終活”の大きな実践メリットですね。

ほかにも、長年抱え込んできた不要なものを処分することで精神的に身軽になれることや、整理整頓されたシンプルな空間とすることで、自身の暮らしやすい環境をつくること、転倒や災害時のリスクを軽減することなどもメリットとして考えられます。

いつ頃からどんなことを始めればいい?

生前整理の意義は理解できても、具体的にいつ頃からどんなことをすればいいのか、方法も何も分からないという方も多いでしょう。始めるタイミングについては、できればやや早いと思われる気力体力ともに余裕のある、まだ若いうちがお勧めです。自分の最期なんてまだまだ実感がわかないという方も、明日何が起こるかは分かりません。思い立った時が始め時と考え、できることから着手しましょう。

定年退職を同僚や部下から労われるこれから生きていく中で、意志が変わったり、状況が変化したりすることもあって当然です。生前整理は、一度行ったらそれが絶対というものではありません。必要に応じて見直していくという心づもりで、ハードルを高くしすぎず、子どもが独立した、親の遺品整理を経験した、定年退職したなど、人生の転機にあわせて始めるなどするとよいでしょう。

生前整理で行うべきことは、以下のようなものが主となります。不用品の処分と家財整理、財産目録の作成、重要情報の書き出し整理、遺言書やエンディングノートの作成、それに葬儀や墓の準備手配などが、置かれている状況やご自身の考えにより加わってきます。

生前整理を効率的に進めるコツ!上手な方法を知ろう

では実際にどのように作業を進めていけばよいか、流れと進め方のコツをみていきます。 生前整理は、原則として家財の整理と不用品の処分から始めましょう。要不要を分けて整理を進めることで、その後の財産目録作成や遺言書の作成が行いやすくなります。クローゼットやタンスに保管されているもの、長年しまい込んでいるものを一度取り出し、分別していきましょう。

ポイントは、自分なりの基準をもって「使うもの」、「使わないもの」、「手放すもの」、「残すもの」を分けるようにすることです。まずはシンプルに「使う」、「使わない」の2つで分けましょう。日常的に「使うもの」は取り出しやすい収納スペースへ、2年以上使っていないなど「使わないもの」、使わない可能性が高いものは、別の箱やスペースにまとめます。

どうしても判断に迷うものを入れる「保留」を設けるのも一案ですが、その場合はここに分類されるものが多くなりすぎないよう、自分に課す基準を厳しめにして分別を進めてください。そして「保留」箱は、1年後など時間をおいて中身を見直し、再び分別判断を行うようにしましょう。

「使わないもの」は、すぐに「手放すもの」と「残すもの」に分けます。明らかに不用なものは手早く処分しましょう。売れる可能性があるものはリサイクルショップやフリマアプリを、売れないものは不用品処分業者を活用すると、多くの物もスムーズに片付けられます。リサイクルやフリマの仕組みにより、次の人のもとで活かされると思えば、思い入れのあったものも手放しやすいでしょう。少しでもお得に進められる点もメリットです。

日常的には使わないけれど、思い出のものとして「残すもの」、財産として「残すもの」はコンパクトにまとめます。とくに思い出の品は捨てられず、多くが手元に残るものとなりがちですが、全てを保存しておくことはできません。この収納場所に入るだけを上限とするなど、あらかじめ基準を作り、それを超えない範囲とすることをお勧めします。

かさばるものや、自分自身が見て楽しめればいいというものならば、写真やデータとして残し、現物を処分する方法もあります。手軽に身につけられるサイズや飾れるサイズに、小さくリメイクしてもらえるサービスなどもありますから、そうしたものも上手く利用してください。

財産として「残すもの」や重要書類、貴重品は、安全な保管は可能でも、すぐに指示して取り出せる場所にまとめます。1カ所でなくてもかまいませんが、遺言書やエンディングノートで家族に示せる程度、あまり複数箇所に複雑に分かれ、探すことが困難になってしまわないように注意しましょう。実印や印鑑証明、通帳、土地の権利書、有価証券、保険証書類などの管理は、とくに明確に、整理を徹底しておくべきところです。

近年増加しているデジタル情報の整理も重要です。ネット専業銀行やネット証券会社などを利用している場合、その存在とアクセス可能な情報を遺族に伝えられるようにしておかねばなりません。定額制で利用しているサービスやネットスーパーのサービスなど、後の人が停止手続きをとる必要があるもののピックアップもきちんと行いましょう。

個人として発信したコンテンツ、作成したデータなどについても、家族が引き継げるようにするのか、死後は無効とするのか、プライベートな問題としてその処理に関する希望が反映されるように準備しておくことが望ましいですね。

財産目録や遺言書、エンディングノートはどう書く?

身の回りの整理がある程度進んだら、財産目録を作成しましょう。資産をリストにして示すことで、価値のあるものが継承されなくなってしまうリスクをなくし、相続時の面倒や後々の親族間におけるもめ事の発生などを防止することができます。

土地や建物といった不動産、現金、預貯金、有価証券、保険証書、自動車、美術品・骨董品といったプラスの財産について、また借金や債務、ローンなどマイナスの財産についてもリストに分けて記載します。

リストには関連書類の所在や価額についても明記しておくと、より後を担う人の手間が省けます。相続税が発生するか否かなどを判断する際にも役立ちますから、丁寧に、漏れのないよう整理しておきましょう。

完成した財産目録をもとに、遺言書を作成しておくと、相続トラブルの回避に役立ちます。遺言書は法律の定めに従った方式で作る必要があり、これに反したかたちのものは無効と判断されてしまいますから、注意が必要です。

定められた方式で作成すれば、誰にどの財産をどれだけ相続させるのか、自らの意志を明らかにすることができ、原則としてその内容が法定相続よりも優先されるものとして効力を発揮するところとなります。種類としては「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3タイプがあります。自分に合う様式を選択し、必要に応じて専門家の助言を仰ぎながら作成、保管しておくとよいでしょう。

遺言書のように法的効力をもつものではありませんが、自分の意志や家族への想いを伝えるものとして、エンディングノートを作成しておくことは、“終活”の一歩としてお勧めです。どのような媒体に、どのような様式で記してもかまいません。自分がまとめやすいスタイルで書いてみてください。

自分自身のことや終末期の希望、ひとり暮らしの場合は、かかっている医療機関や家族・知人などの連絡先を記しておくと安心です。親戚や友人・知人、交流のあった人のリストがまとめられていれば、家族が知らせる先を迷うこともないでしょう。

財産のこと、作成していれば遺言書のこと、形見分けや遺品整理について、詳しく状況が明らかにされていると、遺族の負担が大幅に軽減されます。自分に万が一のことがあった場合に、後を頼みたいこと、ペットの世話や事業など、どうしても気がかりなことを記載しておくのも有効です。

葬儀について会場や費用、規模、用いる遺影、戒名など、すでに手配していることや希望内容があれば、分かりやすく書き込んでおきます。お墓についても同様です。あまり事細かになりすぎると、かえって思わぬ負担を家族にかけてしまうことにもなりかねませんから、ある程度、後の人の選択に任せることも考えつつ、ここは大切にしてほしいと思うポイントを、希望としてしっかり伝えるようにすると理想的ですね。

自分自身が意志を示せなくなった時に備え、延命治療に関する希望や介護費用、資産管理を頼みたい人なども書いておきましょう。そして家族やお世話になった人、友人など、大切な人へのメッセージを記します。それ以後はもう直接伝えることはできない想いを、自分の言葉で伝えることができる貴重な場所ですから、しっかりと書き込んでおきたいですね。

自分、家族のための生前整理のやり方についていかがでしたか。

生前整理について、その内容から意義、方法など概要を理解することができたでしょうか。

生前整理は、いざ始めようとあまり気負ってしまうと、全てを自分だけで抱え込み、一度に完璧を目指しすぎて挫折してしまいがちです。

少しずつコツコツと、今日は写真整理、今日は被服など、スケジュールを立てて、時には気分転換も行いながら進めていくことが、やり遂げるコツになります。自分ではどうにもならない時には、サポート業者や家族の手も借りましょう。余裕をもって少しずつ始めることで、これからの人生もより豊かなものにする、それが生前整理です。自分のため、家族のため、あなたもできることから始めてみましょう。

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